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インドネシア外資規制

インドネシアのノミニー制度とは?仕組み・適法性・リスク、そして外資規制との関係

  • ノミニー制度の基本的な仕組み
  • ノミニー制度の適法性と法規制
  • ノミニー制度を利用するリスク
  • 法的リスク(契約無効・権利保護なし)
  • 名義人による背信行為・企業乗っ取りリスク
  • 金銭トラブル・債務不履行リスク
  • 行政処分・事業継続リスク
  • 外資規制とノミニー制度の関係
  • 違法リスクを回避するための適法な進出方法
  • 外資100%出資による現地法人設立
  • ローカルパートナーとの合弁会社(JV)設立
  • フランチャイズ契約による展開
  • ライセンス供与・技術提携
  • まとめ

ノミニー制度の基本的な仕組み

ノミニー制度とは、外国人の事業者がインドネシア人個人やインドネシア企業の名義を借りて会社の株式や資産を保有するスキームのことです。 登記上は名義人であるインドネシア人が株主となり、実質的な所有者である外国人は裏で権利を保持します。インドネシアでは法人設立に株主2名以上が必要であり、外国資本が1%でも入れば外国法人(PMA)と見なされるため、日本人が100%出資の現地法人を作るには名義上インドネシア人のみの会社にせざるを得ず、事実上ノミニー契約による設立となります。 ノミニー制度が利用される主な理由は、インドネシアの外資規制と資本金要件にあります。インドネシアでは長年「ネガティブリスト」と呼ばれる外資参入制限が各業種ごとに定められており、業種によっては外資出資比率が制限され、現地パートナーが不可欠でした。希望する出資比率で事業を始めるために、やむを得ず名義のみ現地人の会社を設立するケースがあったのです。 さらに、外国法人(PMA)には最低資本金100億ルピア(約1億円)という払込資本要件があります。 2021年の法改正で2.5億ルピアから大幅に引き上げられ、複数事業を行う場合は事業ライセンスごとに資本拠出が必要になるため負担が一層重くなります。一方、インドネシア人だけで設立する内資法人(PMDN)であれば最低資本金はわずか1,250万ルピア(約11万円)と桁違いに低く設定されており、資金面のハードルの高さから、資本力に余裕のない企業ほど「名義貸し」を使って内資法人を作り、実質的に自社の事業を営む道を模索する傾向にあります。 また、一部では税務上のメリットや企業情報の秘匿性を目的としてノミニー制度を利用するケースもあります。例えば、インドネシア人名義の会社にすることで外国企業と見なされず特定の税負担を回避できると考えたり、実質的なオーナー情報を表に出さないようにする意図です。しかし、このような行為は脱税やマネーロンダリングに繋がるおそれがあり、当局からも問題視されています。 本記事では、ノミニー制度の基本的な仕組みや適法性、リスク、そして外資規制との関係を深掘りし、インドネシアでの事業展開を検討する日本企業が適切な判断を下せるように解説します。

ノミニー制度の適法性と法規制

結論から言えば、インドネシア法はノミニー契約を明確に禁止しており、違法(少なくとも無効)とされています。インドネシアの投資法(2007年法律第25号)第33条第1項・第2項では、国内投資家および外国投資家が他人名義で株式所有を目的とする契約や声明を作成することを禁止しており、もしそのような契約を結んだ場合は法律上無効(null and void)とみなすと規定されています。 これは名義上の所有者と実質的な所有者が異なる会社の発生を防ぐ目的で定められた条項です。したがって、外国人がインドネシア人に株式を持たせるような秘密契約は初めから法的効力を持たないことになります。実際、インドネシアの裁判所でもノミニーに関する合意はしばしば無効と判断されており、法的手段で保護されないリスクが極めて高いです。 近年、インドネシア政府は名義貸しの摘発と防止を強化しています。2018年には大統領令第13号および2019年法務人権省令第15号によって全ての法人に究極的実質所有者(Ultimate Beneficial Owner, UBO)の届出が義務化されました。これにより、たとえ登記上はインドネシア人のみの会社であっても、その背後にいる最終的な所有者が誰かを政府が把握できる体制が整えられています。 インドネシアが金融活動作業部会(FATF)の勧告に沿って透明性を高める中で、名義貸しによる偽装はますます困難になっています。加えて、2021年には前述のとおり投資法制の大改革(いわゆるオムニバス法による「ポジティブリスト」への転換)が行われ、多くの分野で外資規制が緩和されました。2023年にはその整備を経てジョブ創出法が改訂・施行され、外資誘致と法令順守の両立に政府は注力しています。こうした流れの中、違法なノミニースキームは以前にも増してリスクが高く、摘発されれば企業活動に重大な支障をきたすことを認識すべきです。

ノミニー制度を利用するリスク

法的リスク(契約無効・権利保護なし)

ノミニー契約そのものがインドネシア法では無効とされており、外国人出資者は法的な保護を受けられません。 万一、名義人との間でトラブルが生じても、インドネシア法では無効であるため、裁判で権利主張することは困難です。極端な場合、現地名義人が会社の資産や経営権を自らのものだと主張しても、法的には覆せない恐れがあります。

名義人による背信行為・企業乗っ取りリスク

ノミニーに会社名義や資産を握られている以上、名義人が裏切って会社を乗っ取るリスクは常につきまといます。例えば、名義人が突如株式を第三者に譲渡してしまったり、勝手に事業を売却するといった事態も起こりえます。実際、インドネシアではバリ島を中心に「外国人が配偶者やパートナーの名義にした結果、関係悪化で事業を奪われた」という話が珍しくありません。

金銭トラブル・債務不履行リスク

ノミニースキームでは通常、外国人が名義人に事業資金を貸付を行う形式が一般的ですがその貸付金について、返済拒否などのトラブルが報告されています。 当初は信頼関係があっても、事業がうまくいかなくなった途端に名義人が借入金の返済を渋る、使途不明になる、といったケースや資金使途が不明な支出が多発し会計・税務上の問題が起こる場合もあります。

行政処分・事業継続リスク

ノミニーによる偽装は当局の監視対象であり、発覚した場合の影響も深刻です。 違法な名義貸しが明るみに出れば、事業許可の取り消しや罰金といった行政罰が科される可能性があります。 違法状態を是正せざるを得なくなれば、合弁への切り替えや事業再編を迫られ、最悪の場合ビジネス自体が頓挫するリスクもあります。

外資規制とノミニー制度の関係

インドネシアのノミニー制度は、外資規制と密接に関わっています。(外資規制に関する詳細な解説はこちら) 2021年の法改正(オムニバス法/ジョブ創出法)により、インドネシアは従来のネガティブリストに代わって「ポジティブリスト」と呼ばれる新たな外資受け入れ方針を導入しました。原則として全ての業種で100%外資出資が可能となり、例外的に出資制限や外資参入禁止の分野が列挙される方式です。 もっとも、完全解放とはいえ一部には依然として制限業種が残っています。インドネシア政府は国益や中小企業保護の観点から特定の業種を外国資本から守る姿勢を維持しており、小規模事業や伝統産業など計69業種は引き続き外国人の出資が禁じられています。 例えばミニマーケット(小型小売店)や屋台・零細店, コピー店など、少額資本で営む現地の生計手段となるようなビジネスは外資参入不可です。さらに26業種については出資比率に上限等の条件が課せられており、一定割合以上はインドネシア人資本でなければなりません。 また、海運業や航空運送業、宅配・クーリエサービスは外資出資比率が最大49%に制限されています。メディア関連では、新規参入時は100%地元資本でなければならず、既存企業への増資という形であっても外資は20%までしか認められません。このような業種では、たとえ外資が事業を主導したくとも法的には過半数株主になれないため、違法と知りつつノミニー(名義人)に株を持たせてビジネスを行おうとする誘惑が生じやすかったのです。 実際、物流(宅配)企業のJ&T Expressは宅配業で急成長を遂げた企業ですが、宅配サービス業への外資出資制限(49%まで)が背景にあり、名義上内資企業としてスタートしていた可能性があります。また報道・放送等のメディア業界や一部の通信事業でも、過去に外国企業が現地名義人を立てて実質経営する例があったとされています。さらに不動産分野では、外国人は原則として土地の完全所有権(Hak Milik)を持てないため、土地や不動産物件をインドネシア人個人の名義で購入する形のノミニー契約が長年行われてきました。

違法リスクを回避するための適法な進出方法

インドネシアで事業展開を図る日本企業にとって、ノミニー制度に頼らず合法的に進出する選択肢は大きく分けて次のようなものがあります。

外資100%出資による現地法人設立

まず、自社の事業分野がインドネシアで外資参入フルオープンである場合は、正攻法で外資系株式会社(PT PMA)の設立を検討します。 必要な最低資本金100億ルピアを用意し、オンライン単一窓口システム(OSS)を通じて投資許可・法人設立手続きを行います。 外資法人であれば出資比率や経営権も100%自社で握れるため、ノミニーを使う必要はありません。もっとも前述の通り資本要件は高額であり、ビザ取得や現地雇用義務など外資企業特有のルールもあるため、事業規模や投資対効果を見極めた上で判断することが重要です。

ローカルパートナーとの合弁会社(JV)設立

進出分野に外資比率制限がある場合や、資本要件の負担を軽減したい場合には、信頼できるインドネシア人パートナーと合弁会社を設立する方法があります。例えば外資出資49%上限の業種であれば、現地企業や投資家に51%を出資してもらい合弁とすることで合法的に事業参入可能です。 ポイントは、あくまで実質的にも出資比率に即した経営権配分や利益配分を行うことです。名義貸しのように裏契約で外国側100%支配にするのではなく、パートナーとは公式な株主間契約(Joint Venture Agreement)を結んで役員構成や重要事項の決定方法を定め、互いに納得の上で協力関係を築きます。信頼できる現地パートナー選びと透明性の高い契約スキームが肝要であり、これにより違法性を回避しつつ現地ネットワークやノウハウを活用した事業展開が可能となります。

フランチャイズ契約による展開

自社が直接出資できない業種でも、フランチャイズ(加盟店方式)であれば市場参入の道が開けます。フランチャイズ契約とは、自社ブランドやビジネスモデルの使用権をインドネシアの現地企業・事業者にライセンス供与し、現地側が店舗運営やサービス提供を行う方式です。例えば、日本のコンビニチェーンがインドネシア企業とフランチャイズ契約を結び、現地法人が店舗展開するケースがあります。この方法なら外国企業は直接株主にならずに済むため、外資規制に抵触しません。

ライセンス供与・技術提携

フランチャイズほど包括的でなくとも、特定の製品製造やサービス提供に関するライセンス契約や技術提携を結ぶ方法もあります。例えば製造業で現地企業に自社技術の使用を許可しロイヤルティを受け取る、サービス業で業務ノウハウを提供してフィーを得るなどの形です。これもフランチャイズ同様、株主として出資しないため外資規制には触れずに済みます。現地企業との契約関係のみで展開できるため初期投資も抑えられますが、自社による直接統制が利きづらいため信頼できる相手か十分な見極めが必要です。

まとめ

インドネシアの外資規制は近年、大幅に緩和され、外資100%で進出できる業種も増加しています。しかし、依然として外資比率の上限がある業種では、外国企業がノミニー制度(名義貸し)を利用しようとするケースが少なくありません。 ノミニー制度は、外国企業がインドネシア人の名義を借りて事業を運営する仕組みですが、インドネシア法では明確に違法とされており、契約自体が無効になるリスクがあります。さらに、名義人による企業の乗っ取りや、資金流出、税務上のメリットなどのリスクも高く、BKPM(インドネシア投資調整庁)は違法なノミニースキームの取り締まりを強化しています。 このような不安定な法規制環境の中で、ノミニー制度に頼らずにインドネシア市場に進出するためには、適法な戦略の策定が不可欠です。外資100%での進出が可能な業種では、正規のPMA(外資法人)を設立し、政府の定めるルールに則った事業運営を行うことが推奨されます。また、外資規制が残る業種では、信頼できるインドネシア企業と正式な合弁事業(JV)を設立する方法が有効です。さらに、フランチャイズ契約やライセンス供与を活用することで、外資規制の影響を受けずに市場参入することも可能です。 インドネシア市場は、人口の増加と経済成長により今後も大きなビジネスチャンスを提供する魅力的な投資先です。しかし、外資規制や法的リスクを十分に理解し、適法な進出戦略を構築することが、持続可能な成長を実現する鍵となります。 リデルタでは、日本企業がインドネシアを含む東南アジア市場へ合法的かつ効果的に進出するためのコンサルティングサービスを提供しています。最新の外資規制情報の提供、適法な法人設立のサポート、合弁パートナーの選定、フランチャイズ展開の戦略策定など、多角的な支援を行い、日本企業の海外展開を成功へと導きます。 「インドネシア進出」「東南アジアM&A」をご検討の企業様は、ぜひ無料相談にてお気軽にご連絡ください。リデルタは、東南アジアでの日本企業の成長を全力でサポートいたします。

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