【保存版】ベトナム〜ラオス:国別・制度別で選ぶ東南アジアの送り出し機関
外国人材を日本に送り出す際、現地で中心的な役割を担うのが送り出し機関です。名称、監督官庁、教育機関との分離・一体の関係は国ごとに異なり、日本のOTIT承認リストに載る機関だけが日本向けに送り出せます。ベトナムからラオスまで7か国の制度と留意点、最近の変更点、機関を選定する際の共通の確認項目を整理します。

この記事の要点
- 1日本向けの送り出しはOTITの承認送出機関リストに掲載された機関に限られ、リストは国ごとに随時更新される。
- 2教育と送り出しの関係は分離型(フィリピン、タイ、ラオスなど)と一体型(ベトナム・インドネシアの一部)に分かれる。
- 3インドネシアは配置をP3MIに限定し、LPKは配置不可。フィリピンはPRAを通さない直接採用が違法。
- 4タイは認可EAまたはDOEを代理人に指定する方式で直接選考不可。ミャンマーは政情により手続きが遅延し得る。
- 5カンボジア・ラオスは2025年のOTITリストで利用不可注記や名称変更があり、契約直前の最新版照合が必須。
本記事は2025年9月時点の情報に基づきます。
外国人材を日本に送り出す際、現地で中心的な役割を担うのが「送り出し機関」です。国ごとに呼び名や制度は異なりますが、日本のOTIT(外国人技能実習機構)の承認リストに掲載された機関だけが日本向けに送り出せる点は共通しています。本記事では、送り出し機関の役割と制度的な特徴を整理したうえで、東南アジア7か国の制度と留意点、選定時の確認項目をまとめます。
送り出し機関とは
送り出し機関は、基本的に次のような役割を担っています。
- 人材募集・選抜:候補者を現地で募集し、学歴や職歴、日本語力などを確認したうえで選抜する。
- 教育・訓練の手配:日本語教育や職業訓練を行う学校・センターと連携するか、自社施設で教育を実施する。
- 手続き・契約のサポート:雇用契約の締結、在留資格認定証明書やビザの取得支援、必要書類の整備を担当する。
- 健康診断・保険加入:渡航前の健康診断や各種保険加入を手配し、日本での生活に備えさせる。
- 出国前オリエンテーション:日本の生活習慣や労働ルール、トラブル時の対応などを指導する。
- 渡航・配属支援:空港送迎や住居・職場への案内、日本側監理団体・受け入れ企業との引き継ぎを行う。
制度的な特徴
- 政府のライセンス管理:各国の労働省などが送り出し機関にライセンスを発給し、無許可での活動は違法となる。
- 日本側リストとの連動:OTITが各国政府からの通知を受け「承認送出機関リスト」を公開する。ここに記載がない機関は、日本向け派遣が認められない。
- 教育との関係性:送り出しと教育を別組織が担う「分離型」(フィリピン、タイ、ラオスなど)と、送り出し機関が自前の学校を併設する「一体型」(ベトナムの一部、インドネシアの一部)がある。インドネシアは配置をP3MIに限定し、教育をLPK/BLKが担う厳格な分離型。
送り出し機関は単なる仲介業者ではなく、人材調達から教育、法的手続き、生活支援までを包括的に担う存在です。受け入れ企業にとっては、どの国の、どの機関と連携するかが採用の成否を左右します。
ベトナム

制度概要
- 送り出し機関:海外労働派遣サービス企業(XKLĐ企業)
- 監督:MOLISA(労働・傷病兵・社会省)/DOLAB(海外労働局)
- 日本向け認定機関はDOLABがOTITへ通報し、OTITのサイトで公表される
- 違反機関は処分・公表される仕組み
- 業界団体のVAMASが星評価を公表しており、参考指標として活用できる
主な送り出し機関(公開情報)
- GAET(Defense Economic Technical Industry Corporation):ハノイ/XKLĐ企業/国営系の色が強く、手続順守と基本的な生活指導の整備が特徴。
- MIRAI International JSC:ハノイ/XKLĐ企業/面接から渡航までの工程を明文化し、書類進行の確実性に定評。
- Dong Anh Huresu., JSC:ハノイ近郊/XKLĐ企業/地域密着で、生活・就業ルールの事前指導に注力。
学校との関係性
- 分離型:語学・技能は外部学校で行い、XKLĐ企業は派遣に専念する
- 一体型:XKLĐ企業が校舎やトレーニングセンターを自社運営し、一貫体制を構築する
- 許認可:派遣(XKLĐ)と教育(学校)は別ライセンスで管理される
留意点
- 送り出し費用の透明化や労働者保護を強化した新法(Law 69/2020、2022年施行)の運用が徹底されているかを確認する
- 契約条項・苦情対応の整備状況を確認する
- 承認リストは定期的に更新されるため、契約直前に最新版で照合する
フィリピン

制度概要
- 送り出し機関:PRA(Philippine Recruitment Agency)
- 監督:DMW(Department of Migrant Workers)がライセンスを一元管理
- 職業訓練はTESDAが認証
- 日本向けTITP/SSW承認PRAリストをDMWが公表
主な送り出し機関(公開情報)
- 1st Northern International Placement Inc.:マニラ首都圏/PRA(DMW承認)/日本向け運用の標準化が進み、大量採用の案件運用経験が厚い。
- EDI Staffbuilders International Inc.:マニラ首都圏/PRA(DMW承認)/大手系。ドキュメント整備・スケジュール管理の手堅さが特徴。
- STB-DJL Human Link Inc.:マニラ首都圏/PRA(DMW承認)/日本市場特化の体制で、面接・書類・渡航の整合に定評。
学校との関係性
- 分離型が原則:教育はTESDA認定校、送り出しはPRA
- 別ライセンスで明確に分離されている
留意点
- PRAを通さない直接採用は違法
- 契約は必ずDMWライセンスを持つPRAと締結する
- 2021年のRA11641によりDMWが発足し、制度の一本化が進行中
インドネシア

制度概要
- 送り出し機関:P3MI(Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia)
- 訓練機関:LPK/BLK(職業訓練)
- 監督:BP2MI(海外労働者保護庁)/雇用省
- P3MIの公式リストはBP2MIが管理・提供し、日本向けはOTIT承認リストも参照する
- 訓練はLPK/BLKが担い、LPKは配置不可が公式方針
主な送り出し機関(公開情報)
- JOE Manpower International:ジャカルタ/P3MI/日本向け案件の実務経験があり、配置手続の標準化が進む。
- JATIM Sukses Karya Bersama:東ジャワ/P3MI/地方動員力に強み。訓練はLPK/BLKへ委託。
- Jakarta Maju Bersama:ジャカルタ/P3MI/都市圏候補者のスクリーニングと書類精度で評価。
学校との関係性
- 分離型が原則:P3MIは配置(送り出し)、LPK/BLKは訓練のみ
- LPKは配置不可(BP2MI長官が再確認)。契約主体はP3MIに限定される
留意点
- 非手続き(ノンプロ)送出の摘発強化が続いている。契約はP3MIと締結し、教育はLPK/BLKに委託して監査する
ミャンマー

制度概要
- 送り出し機関:OEA(Overseas Employment Agency)
- 監督:Ministry of Labour(労働省)。業界団体はMOEAF
- OTIT「承認送出機関(MMR)」に掲載された機関のみ日本向けに送り出せる
主な送り出し機関(公開情報)
- Golden Win (Shwe Win) Co., Ltd:ヤンゴン/OEA(OTIT承認)/日本向け手続経験があり、生活指導を重視。
- J. Works Ltd:ヤンゴン/OEA(OTIT承認)/書類整合と面接運営の標準化に強み。
- Japan Myanmar Co., Ltd:ヤンゴン/OEA(OTIT承認)/日本側窓口の明記があり、連絡経路が明瞭。
学校との関係性
- 分離型:OEA(送り出し)と語学・職能教育は別。出国前オリエンテーションの実施義務がある
留意点
- 政情変動により手続き・渡航が遅延・変更し得る。OTITの最新版PDFで承認状況を必ず確認する
タイ

制度概要
- 送り出し機関:Private Employment Agencies(民間EA)
- 監督:Ministry of Labour/労働省 雇用局(DOE)
- 海外雇用主は民間EAまたはDOEを代理人に指定する(直接選考は不可)。日本向け承認はOTITリストを参照
主な送り出し機関(公開情報)
- ABC Thai-Japan Recruitment:チェンライ/民間EA(OTIT承認)/日本向け案件の運用経験。
- JYT Projects Recruitment:バンコク/民間EA(OTIT承認)/面接からビザ書類までの進行管理に強み。
- Northeast Overseas Recruitment:ウドンタニ/民間EA(OTIT承認)/地方候補者の動員・移動手配に強み。
学校との関係性
- 分離型:語学・職能は学校/トレーニングセンター、送り出しは認可EAまたはDOE
留意点
- 無認可ブローカーを避けるため、必ず認可EA/DOE経由での採用を徹底する
カンボジア

制度概要
- 送り出し機関:PRA(Private Recruitment Agency)
- 監督:MoLVT(労働職業訓練省)
- Sub-Decree 190(2011)/Prakas 046/13などでライセンス・監査・出国前研修を規定。日本向けはOTIT承認を参照
主な送り出し機関(公開情報)
- Human Power:プノンペン/PRA(OTIT承認)/法定の出国前研修の運用実績。
- Phnom Penh Labour Supply:プノンペン/PRA(OTIT承認)/案件規模への対応力と研修枠の先行確保が特徴。
- OH.M.I.D.A.S (Cambodia):プノンペン/PRA(OTIT承認)/日本語教育や生活指導を短期集中型で行い、候補者の早期派遣に対応しやすい。
学校との関係性
- 分離型:語学・技能は学校、PRAは出国前研修の実施責務を負う
留意点
- 承認PDFの注記(利用不可など)に差分が出るため、契約直前に最新版を必ず照合する
ラオス

制度概要
- 送り出し機関:ESE(Employment Service Enterprise)
- 監督:MOLSW(労働社会福祉省)
- ESE設立ライセンスの手引きや国外送出許可の説明資料がある。日本向けはOTIT承認リストを参照
主な送り出し機関(公開情報)
- LAO Labour Promotion Service:ビエンチャン/ESE(OTIT承認)/小規模な案件を丁寧に進行。
- XAIYA Employment Service:ビエンチャン/ESE(OTIT承認)/ラオス国内では比較的規模が大きく、日本向け技能実習・特定技能候補者の取り扱い実績を持つ。
- INTER LABOUR SOLE:ビエンチャン/ESE(OTIT承認)/地方候補者の動員・移動段取りに経験。
学校との関係性
- 分離型:訓練は学校・センター、ESEは職業紹介・送り出しを担当
最近の変更点
| 国名 | 主な動向・制度改正内容 | 補足・施行時期など |
|---|---|---|
| 日本 | 技能実習制度が廃止され、新制度「育成就労」に移行する関連法が2024年6月に可決 | 最長3年間の就労と特定技能への接続が前提。2027年頃の施行を目指して準備中 |
| フィリピン | RA11641(2021年)により新設されたDMW(移民労働者省)が旧POEAの権限を継承 | 送り出し機関(PRA)の承認・監督を一元化し、承認リストをDMWが定期更新 |
| カンボジア | 2025年3月11日版のOTIT承認リストに「利用不可」などの注記が追加 | 送り出し機関の利用可否が都度更新される運用。契約前に最新版PDFで照合が必要 |
| ラオス | 2025年4月25日版のOTIT承認リストで一部機関(例:XAIYA Employment Service Co., Ltd)の名称変更を反映 | 書類・契約書の社名を新名称に合わせる必要あり |
| インドネシア | BP2MI(海外労働者保護庁)が通達を再確認。LPK(訓練機関)は配置業務不可 | 配置はP3MI(送り出し会社)のみが担い、教育と配置の分離を徹底 |
| タイ | 雇用主は必ず「認可EA」またはDOE(雇用局)を代理人に指定する方式 | 直接採用は不可であることを改めて確認 |
選定時に共通して確認すべきこと
国ごとの制度は異なりますが、送り出し機関を選定する際の確認項目には共通するものがあります。
- 承認の有無:契約直前時点のOTIT承認リストに掲載されているか。注記や名称変更が反映されているか。
- 契約主体の適法性:その国で送り出しを担える認可機関と契約しているか。教育機関や無認可ブローカーが契約主体になっていないか。
- 費用の透明性:労働者が負担する費用の内訳と上限が、対象国の法規制に沿って明示されているか。
- 教育の質:日本語・技能教育を誰がどこで行い、修了判定をどう行うか。分離型の場合、教育委託先の監査ができるか。
- フォロー体制:来日後の苦情対応、帰国時の手続き、トラブル時の連絡経路が明文化されているか。
ベトナムとフィリピンは最も安定した供給国として確立していますが、インドネシア、ミャンマー、カンボジアなども将来的な可能性を持っています。目先のコストだけでなく、教育の質、フォロー体制、法的コンプライアンスを総合的に評価して選定することが、外国人材受け入れの成否を左右します。
検討にあたっての論点
- 契約予定の機関は、契約直前時点のOTIT承認リストに掲載されているか。注記(利用不可など)はないか。
- 対象国は教育と送り出しが分離型か一体型か。契約主体と教育の委託先を制度に沿って分けているか。
- 送り出し費用の内訳と労働者負担の上限が、対象国の法規制に沿っているか。
- 契約書の社名・ライセンス番号が最新の登録情報と一致しているか。
- 政情や制度改正で手続きが遅延した場合の代替国・代替機関を用意しているか。
本記事の数値・制度は2025年9月時点の公開情報に基づきます。最新の制度・統計は一次情報で確認してください。
日本企業への示唆
送り出し機関の選定は、受け入れ企業にとって採用の成否を左右するだけでなく、人材関連事業への投資や提携を検討する日本企業にとっても、どの国のどの機能に関与できるかを決める前提になります。
- 契約主体は各国の認可機関(XKLĐ企業、PRA、P3MI、OEA、EA、ESE)に限られ、OTIT承認リストへの掲載が日本向けの必須条件になる。
- 教育と送り出しの分離が制度上求められる国では、教育事業への関与と送り出し機関との提携を別の契約として設計する。
- 承認リストや監督官庁は頻繁に更新されるため、契約直前の照合と、制度変更時の代替案を運用に組み込む。
検討前に確認したいこと
- 1契約予定の機関は、契約直前時点のOTIT承認送出機関リストに掲載されているか。注記(利用不可など)はないか。
- 2対象国は教育と送り出しが分離型か一体型か。契約主体(送り出し)と教育の委託先を制度に沿って分けているか。
- 3送り出し費用の内訳と労働者負担の上限が、対象国の法規制(ベトナムLaw 69/2020など)に沿っているか。
- 4契約書の社名・ライセンス番号が最新の登録情報と一致しているか。名称変更や監督官庁の変更を反映したか。
- 5政情や制度改正で手続きが遅延した場合の代替国・代替機関を用意しているか。
執筆
ReDelta Insights編集部
ReDelta Insights Editorial
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